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神戸地方裁判所 昭和43年(レ)54号 判決 1969年2月06日

控訴人 樫原さかゑ

被控訴人 松村正夫

主文

原判決を次のとおり変更する。

控訴人は被控訴人に対し金六万九八三九円及びこれに対する昭和四一年八月一日から支払ずみに至るまで年一割八分の割合による金員を支払え。

被控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一・二審を通じてこれを三分し、その一を被控訴人の、その二を控訴人の各負担とする。

この判決は第二項に限り仮に執行することができる。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は適式の呼出を受けながら当審口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用及び書証の認否は、原判決一枚目裏一一行目の「昭和四〇年一一月一二日に、」の次に「金一五万円」を加え、同一二行目に「月金六〇〇〇円」とあるを削り「月四分」を加えるほかは、いずれも原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

一、控訴人が被控訴人から昭和四〇年一一月一二日に金一五万円を、弁済期昭和四一年五月三一日利息月四分毎月一二日限り支払の約で借り受けたこと、控訴人が昭和四一年四月一二日に元本の内入として金五万円を支払つたほか、昭和四〇年一一月一二日から昭和四一年七月三一日までの間の利息及び遅延損害金を支払つたことは当事者間に争がなく、原審証人松村年子の証言に弁論の全趣旨を合わせると、控訴人が支払つた右利息及び遅延損害金の内訳は、昭和四〇年一一月一二日に金三八〇〇円(元本金一五万円に対する同日から同月三〇日までの利息)、同年一二月から昭和四一年三月までの間毎月一二日に各金六〇〇〇円(元本金一五万円に対する各月の利息)、昭和四一年四月一二日に金四八〇〇円(元本金一五万円に対する同月一日から同月一二日までの利息及び元本金一〇万円に対する同月一三日から同月三〇日までの利息)、同年五月から同年七月までの間毎月一二日に各金四〇〇〇円(元本金一〇万円に対する同年五月分の利息及び同年六、七月分の遅延損害金)であることが認められ、右認定に反する証拠はない。

二、本件貸金一五万円から前記認定の元本についての内入金を控除し、更に前記認定の利息及び遅延損害金の弁済金のうち利息制限法第一条所定の利率(年一割八分、日歩四銭九厘三毛)によつて計算した金額を超える部分はその都度元本に充当されたものとして計算すると、別表記載のとおり昭和四一年七月三一日現在において元本の残額は金六万九八三九円となり、利息及び同日までの遅延損害金は完済されていることになる。

なお、利息制限法二条の規定は利息の天引きについて元本の支払いに充当することとした場合の計算方法を定めているところ、利息の天引きはすなわち利息の前払いにほかならないのであるから、同規定は、金銭消費貸借の成立の当初における利息の天引きについて適用するだけではなく、その後における利息の前払いについてもこれを準用するのを相当とする。本件において、たとえば別表記載五号のとおり、昭和四一年三月一二日に同月一日から三一日までの利息として金六〇〇〇円を支払つたのであるから、同月一三日から三一日までの一九日間の利息は同月一二日に前払いをしたこととなる。そこで右支払金額六〇〇〇円のうち元本一三万五八一三円についての同月一日から一二日までの一二日間の制限利息八〇三円を除いたその余の支払部分五一九七円は右支払日(同月一二日)においてなお元本一三万五八一三円につき同月一三日から三一日までの一九日間の利息の前払いをした金額とみることができるから、利息制限法二条の規定に従い、右前払額五一九七円がこれを元本一三万五八一三円から控除した残額一三万六一六円を元本として計算した同月一三日から三一日までの一九日間の制限利息一二二三円を超過する部分三九七四円は元本一三万五八一三円の支払いに充当したものとする。別表記載のその余の各号(ただし、六号を除く。)も右の計算方法によつて元本の弁済充当をした。

三、控訴人は、右元本の残額及び昭和四一年八月一日以降の損害金については、訴外白石時雄がその支払をし、控訴人に対してその支払請求をしない旨の合意が控訴人と被控訴人との間に成立したと主張するけれども、これを認めるに足りる証拠はさらにないから、右主張は採用できない。

四、よつて、被控訴人の本訴請求は前記元本の残額金六万九八三九円及びこれに対する昭和四一年八月一日から支払ずみに至るまで年一割八分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるのでこれを認容し、その余は失当として棄却すべきであるから、原判決をこのように変更すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条、第九二条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 原田久太郎 中川幹郎 三谷忠利)

別表<省略>

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